約150年前、日本人は欧米列強の植民地政策の波が押し寄せる中で、アジア諸国の中で類を見ない成長の布石となる明治維新を成し遂げました。
欧米の外圧に対する危機意識、江戸幕府300年の太平下での制度疲労、商人の台頭に代表される社会の価値観の変化等により休火山からマグマが一気に噴き出し活火山となったような維新であったといえましょう。
海に面し進取の気風に富み、幕末の早い時期に列強との戦い等を通じて外国の力を痛感し、日本の行く末を真剣に考え、尊王攘夷から、言わば尊王和夷へと考えを変えた薩摩、会津盆地であくまでも家訓を守り徳川幕府に忠義を尽くし、既存の伝統、価値観を守り、日本の美学を貫いた会津、戊辰戦争における薩摩と会津の戦いはまさに価値観の戦いであり、その両藩の価値観は日本人の強い共感を得ています。
当時諸藩では程度の差こそあれ「人づくりは百年の計」との信念を持っていました。特に青少年の育成には積極的に取り組み、ここで育てられた人材が維新のマグマ噴火のエネルギー源となり縦横無尽に活躍しています。これらの諸藩の中で、特筆すべき人づくりシステムが薩摩の郷中教育と会津の什教育でした。
異年齢グループでの厳しい規範遵守と罰則、文武両道の鍛錬、これらは一見、画一的で個性のない人材を生み出す教育と誤解されがちです。しかし実は強い個性と創造力をもって自分で考えて行動する習慣を身につける教育手法であり、結果として両藩に強靭な人材と強い組織力をもたらしました。
AI、ロボット技術等の画期的な進歩とグローバル化の急激な進展による多様な文化、慣習、価値観、格差等が顕在化するこれからの社会においては、自主・自立心と豊かな想像力を持ち、社会、組織規範を守り、多様性を受け入れ、様々な価値観の人材の力を引き出し、更に調和させ、あたかもオーケストラの指揮者がハーモニーを醸し出すようなリーダーシップを発揮できる人財が不可欠です。
一般社団法人郷什塾は、郷中教育と什教育の理念を現代に活かし、国際社会で活躍できる論理的かつ柔軟な思考と豊かな創造性を有する人づくりを目標に活動します。
この人づくりが、結果的には企業等の組織力向上につながり、日本社会及び国際社会の繁栄に寄与すると確信しています。
皆様のご理解と積極的なご活用をお願い致します。
平成30年5月28日
一般社団法人郷什塾
理事長 岩渕秀樹
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写真:桜島と会津日新館水練場の合成写真