日本企業組織活動の7不思議・何故?どうして?
私は民間会社に再就職して、如何にして強い組織を作るか、如何にして幹部社員や一 般社員のリーダーシップを育成するかということが自分の使命と認識していた。 入社初日及び入社後間もなく組織運営における気になるいくつかの現象に遭遇した。 強いチーム作りと隊員の育成を日本国と日本国民を守る使命の達成と社会貢献と認識し 約35 年間海上自衛隊の幹部自衛官、部隊指揮官として勤務した経験から、 これらの事象は不思議で奇異に感じられた。
私は防衛大から海上自衛隊に入隊し約40年間自衛隊で勤務しました。この間の自分の大きな命題の1つは部下統率と強い部隊作りでした。 定年退職後に民間企業(IT関連会社:JASDAQ上場)に再就職し、人財学校長、取締役等を経験し約7年経過しました。この間、海上自衛隊で経験したリーダーシップの取り方、強いチームの作り方のノウハウを社員教育に適用した結果、興味深い成果を数多く得ました。日本企業は日本人の最も得意とする愛社精神と強いチームワークに基づく強力な組織作りの着意と努力が不足しており、歯がゆい思いをしています。 日本的強力な組織力の発揮を阻害している問題は、日常の勤務の中に多々見受けられます。
これらの悪い習慣を変えて
心が変われば 態度が変わる
態度が変われば 行動が変わる
行動が変われば 習慣が変わる
習慣が変われば 人格が変わる
人格が変われば 運命が変わる
運命が変われば 人生が変わる
人が変われば 会社は変わる
人が育てば 会社は伸びる
① 入社初日に驚いたこと・・「社長の出社」の巻
入社初日、会社の始業は9時で、8 時45 分から朝礼があり、その朝礼で私の入社を紹介 するので8 時30 分頃までには出社して下さいと言われていた。
初めての出社であり遅刻は絶対に許されないと長年の習性から約1時間余裕をもって7時半前に会社につ いた。会社には電気がついており、掃除のおばさんがおられた。おばさんに元気よく挨拶 したら気分爽快となった。私が最初に出勤したことから社員の出社状況をつぶさに観察で きると心の中では喜んでいた。ところが最初に出勤してきたのは社長であった。そして大 部屋の全体を見渡せる社長席にどーんと座られた。
そうです。入社初日に最初に驚いたのは「社長が1番先に出社された。」ことでした。
社長は会社の経営や社員家族の保護を24時間考えておられるが故に、出勤も最初、退社 も最後の心境は良く理解できる。しかし、このような状況では、自ら考えて仕事をする社 員、自ら率先垂範して動く社員は育ちにくい。社員は社長だけに目が向き、係長や課長よ りも社長の顔色、発言に気が向くようになるのではないかと心配した。結果としてその傾 向は顕著にでていた。
社員は勤務外の自宅であろうが、子どもと遊んでいようが、仕事のことを意識している、 いないに関わらず、仕事に関することは心の深層に残っている。そして朝出勤のために家 を出た瞬間に仕事に関する現実のお懸念が表面に出て、昨日の業績と本日の業務、チーム の業務や仕事遂行上の問題等を思案し、整理しているはずである。そこで出勤したとき社 長がおられたら、どうしても受け身、指示待ちの心になってしまう。まして上司の管理職 が出勤していない状況であれば尚更である。
社長が毎日一番最初に出勤されたら、どうしても意識が社長に集中して、自ら考え、自ら 行動する社員は育たないし、係、課、部の階層的な組織を活性化させる仕組みを壊してし まうのは明らかである。
係員→係長→課長→部長という組織が会社の目標に向かって一丸となって力を集中できる 組織は上からの業務命令と下からの報告が適時適切かつ確実になされる組織であることが 基本です。
海上自衛隊は明治維新の改革の中で誕生した旧日本海軍の教え、伝統をそのまま継承し、 また戦後の米海軍との緊密な連携に基づき、米海軍の組織管理・運営の良いところは取り 入れ、また日本人本来の和と共栄の精神を基軸に置いており、特に護衛艦のチーム力は世 界の海軍に類を見ないすばらしいものであると確信しています。海上自衛隊の護衛艦は士 官、下士官、兵員(任期制隊員)が、会社に例えると総合職の幹部社員、専門職の社員、 アルバイト・派遣等の非正規社員の3者が強い信頼関係により、それぞれの役割を絶妙に 発揮して真に強いチームを作っています。これらのノウハウは別途紹介します。
② 業務指揮命令系統が滅茶苦茶なこと
民間企業に勤務して驚いたことの1つは、指揮・命令系統の乱れです。
企業の組織は元々軍隊の組織を参考として作られたもので、軍隊と同様にラインとスタッフで 構成されています。
ラインとは社長―部長―課長―係長―係員の業務指揮命令系統です。
このライン上にない顧問やコンサル的な社員はスタッフです。
指揮命令系統は組織編成のラインに沿ってなされます。
ライン上にないスタッフは命令を出すことはできません。
また部長が他部門の課長に命令をだすこともできません。
命令を出した人も命令を受けた人もそれぞれ監督と実施の責任が発生します。
民間企業においてはこの指揮・命令系統が乱れている傾向が多々見られます。
これでは命令を出した人、命令を受けた人の監督と責任が不明確となります。
また、ライン上にあっても社長が直接、1課員に業務命令を出すとか、 部長が課長を飛び越えて1課員に業務の命令を出す。これは日常よく見られる光景です。 特に口頭命令で多く見られます。チョッとコピーをとってくれとかこの資料を破棄してくれと いったものは問題ありませんが、直属の上司のジョブ管理に関わる仕事はよろしくありません。
このような命令を「ジャンプ命令」といいます。
つまり直属の上司を飛び越えて課員に命令を出すからジャンプ命令です。
これは、緊急を要する事態においては当然必要となりますが、 その場合も命令を出す社長や部長はその旨を飛び越した中間の上司に通知し情報を共有する必要があります。 そうしないとジャンプされた上司は責任を取りようがありません。
特に日常の急を要しない業務においては良くありません。
ジャンプされた上司は、心情的にも自分は何も言われていないから関係ないと思います。
まして日頃から部下の仕事にも責任を持ち、リーダーシップを発揮しているリーダーであれば尚更です。
指揮命令・報告系統がしっかりしている組織であれば、 仮に緊急で社長から直接課員に作業命令があった場合でも、命令を受けた課員はジャンプされた上司にその旨を報告し、 作業の実施の了解を取るようになります。
指揮命令系統と報・連・相は組織の基本です。
自衛隊においては当然のこととして、命令、指示、情報の配布は厳格に区分して隷下部隊が錯誤しない ように出されます。 適時適切かつ厳格な命令及び命令の遂行は、海象、気象はもとより、状況が千変万化する海上作戦においては 最も重要です。
命令は誰から誰に宛てたものか、これは命令なのか指示なのか、あるいは調整なのか、 はたまた情報の提供なのか、これらの区分を明確にして示す必要があります。
指揮・命令系統が厳格に維持していなければ、任務(JOB)の付与があやふやとなり、 責任の所在も不明確となります。
ピラミッド型の組織であれ、昨今脚光を浴びているフラット型の組織であれ、 指揮・命令・調整・情報の参考配布は明確に区分し、定着させないと組織のあらゆる資源を有効に集中した業務は 実施できません。
指揮・命令系統がしっかりしているか、していないかは、社内メールを見れば一目瞭然に分かります。
あなたの会社では、社内のメールのTo、Cc、Bccを正しく使い分けていますか。
業務報告、勤怠報告の宛先(To)を部門全員にしたり、命令・指示の内容を「・・・して下さい」と 表現したりしていませんか。
社内メールは仲良しクラブやメル友との間で使うものではありません。
社内メールは社員がそれぞれの立場で職務を円滑に遂行するためのツールであり、 厳格に使用しなければなりません。
業務命令も報告も宛先(Cc)は命令や報告を受ける人であって、Toで受けた人はその内容について 責任が起こります。
これは如何なる会社や組織であっても同じであり、組織活動の基本中の基本です。
このようにCc:は、メールの内容を写し(Copy)として情報配布した方がいいと思われる人や 部門を入れるものであり、Ccで受信した人は、メールの業務内容に関する実施の責任はないが、 同じ会社の資源の一部としてその業務に寄与できる情報を提供すべき立場となります。
メールの使い方、受信者の責任等々、それらの重要さについて教え、 けじめのある使い方を指導するだけでその組織は活性化し緊急事態でも会社のあらゆる資源を全幅活用して 対処できるようになります。
また、指揮・命令系統が乱れている会社は、社員の終業時の「お先に失礼します」と言う挨拶にも表れます。
「お先に失礼します。」と言って退社する姿は清々しく気持ちの良いものです。
しかし上司に対して「お先に失礼します。」とだけ言って退社する社員を見ると理解に苦しみます。
対等な人間関係の中では礼儀にかなった挨拶ですが、上司の業務命令に基づいて仕事をしている社員が 上司の許可もなく仕事を終えて「お先に失礼します。」と言って勝手に先に帰る光景は当人及びその上司の意識を 疑います。
外資系の企業で英語で言わなければならない場合、あなたなら「お先に失礼します」を 英語で何と言いますか?
直訳して「I’ll go back first!」と上司に言えますか?
そのように言ったら、上司から「明日から会社には来なくて結構です。」と言われるのは間違いありません。
私は「I’ve finished my work for today. Is it OK for me to go back home now? 」と言うと思います。
そして周りの同僚に対しては「I’ll finish for today, See you tomorrow!」と言って退社すると思います。
「本日の仕事は終わりました。これにて退社してよろしいでしょうか?」という1日の仕事の終了報告、 そして上司から「お先にどうぞ!」という退社の許可を得て「ありがとうございます。それでは、お先に失礼します。」 という一連の流れの中での挨拶として使わなければ一流の組織人としては失格です。
ある政治家が米国に外遊し、「One Please! 」を連発された話を聞いたことがあります。
その政治家は日本でも良く使っておられたらしく「ひとつよろしく!」のつもりだったらしいです。
グローバル化は避けて通れない現代に国際的に通用する会社を目指すならば言葉、物事の本質、 その場の状況を的確に判断できる能力と品格を身につける必要があります。
そしてこれは単なる挨拶の問題ではなく、組織の指揮・命令、社員の仕事に関する責任にも帰着する 重要な躾でもあります。
③以降は作業中です!。
この記事へのコメントはありません。